
きよ子
その日、朱音は空を飛んだ/武田綾乃
更新日:2021年9月1日
☆百合関係:友情・恋愛
☆男女の恋愛:アリ
☆男女の性的描写:ナシ
☆女性同士の性的描写:ナシ
<あらすじ>
高校の屋上から飛び降りた朱音。学校側はいじめの調査を行うが、遺書もなく明確ないじめの証言もない。果たして朱音は本当に自殺をしたのか…。拡散する自殺の瞬間の動画、クラス内のカースト、歪な人間関係、それぞれの心に潜む闇が、真実を隠していく。
<百合要素>
百合です。恋愛関係もありますし、友情百合もあります。男女間の恋愛もありますが、最終的には大したことはありませんのでご安心を。
<感想>
個人的にめちゃくちゃ好きな作品です。朱音の飛び降りに関係のあるクラスメイト達の自白のような形で物語は進んで行きます。それぞれの視点から語られる話は、謎に包まれている朱音の死の真相に徐々に近づいていくので読む手が止まらなくなりました。朱音の死の事実だけは変わらないけど、真実がわからないからこそ、それぞれの中の朱音の死の意味や真実はみんな違うものになっているのが面白い。学生時代の家族との関係やクラスメイトとの関係、どこからか湧いてくる怒りや様々な欲望、嫉妬、羨望はきっと誰しもが持ったことがあるもので、それがリアルに描かれていて、学生時代の古傷を抉られているような気持ちになりました(笑) いじめやネット・メディアでの叩き行為、現代の闇みたいなところの根幹にあるものが描かれている気がするし、でもこの作品を通してこういう問題の解決はすごく難しいんだろうなと思わされました。
それはそうと、百合的な話をすると愛と美月がとてもよかったです。性格は悪い感じはあるかもしれませんが、百合的にはとても好きな感じでした。嫉妬とか独占欲とか優越感って大事ですよね(個人の感想)。美月の狡猾さみたいのがめちゃくちゃ好きです。
珍しく少し長めに感想書いてしまいましたが、物語としても百合としても本当に楽しめた作品なので、気になる方はぜひ読んでみてください!